「広い世間」の拡大と地域でのもめごと 4
一方の当事者の要望を聞き、他方の当事者の要望に耳を閉ざすわけにはいかないから、双方に善処を努力するといわざるをえません。
もちろん役所の側が住民の声に鈍感であったり、冷淡であったり、あいまいないい方をしていたり、居丈高な態度で対応したりすることが原因となって住民の憤慨を誘発することもあります。
しかし、しばしば本当の対立は利害を異にする住民の間にあるのです。
だから問題は利害当事者紹としての住民が相互の立場と利害を理解し、話し合いと互譲によって自主的に対立を調整しうるかどうかです。
もし、この意味での自己調整の試みに成功するならば、住民は、役所に対する悪口と依存という屈折した感情をもちつつ、役所に助けを求めるのではなく、みずから地域の社会生活に秩序を創っていかれることになります。
住民が地域の暮しのなかで直面する民事問題が役所に相談や救済を求めてもちこまれ、住民の民事問題の処理を支援するのは日本の自治体の一つの特色となっています。
国の省庁とその出先機関で扱っているのはほぼ行政相談(行政機関の行為に関する照会・苦情.要望など)のみです。
自治体の場合は国のように行政相談にかぎらず、むしろより多くの民事相談に応じています。
そのなかに住民同士のトラブルが少なくないのです。
そうしたトラブルの解決をめぐる相談が多いことは、それだけ自治体が住民にとって接近しやすい身近な役所である証拠の一つでもありますが・・・
逆にいえば民事問題の解決を役所に期待するというのは住民の自治能力の弱さを暗示しているともいえます。